母が倒れ
、救急車で運ばれるという出来事があった。
人生ではじめての、身内の緊急搬送。
それが、二週間ほど前のこと。
診察の結果、薬が処方され、その日は自宅へ戻ることができた。
以後、小康状態が続いていた。
落ち着いている様子だったので、仕事の休みを調整して、今回は母のもとを訪れることにした。
たまたま診察の日でもあり、帰宅した母にちょうど会うことができた。
そこで聞かされたのは、新たな病変が見つかったということ。
心臓の病だった。
ただ、ありがたいことに手術によって改善が見込める疾患とのこと。
医師の説明からも、予後は比較的良好であるように思えた。
母自身も、手術を前向きに検討し始めているという。
判断力はしっかりしており、精神的にも安定していたので、本人の意志を尊重することにした。
自分にできること
いま、自分にできることは何か。
そう考えて、まずは全身のマッサージを行った。
ただし、心臓の病を抱えている今、過度な刺激は禁物。
ごくごくやさしく、表面をなぞるように。
緊張をゆるめ、呼吸を深くするように。
丁寧に、慎重に、でも心を込めて触れた。
これまで積んできた経験のおかげで、いまの母にとって最善の治療ができる。
そのことに、施術者としての誇りと喜びを感じた。
500キロ離れていても
母とは、500キロの距離がある。
けれど今、同じ空間にいられること。
そして、自分の仕事だからこそ、触れ合いながら支えられるという事実。
それが、何よりも幸せに思える。
母との時間は、決して永遠ではない。
だからこそ、目の前にある一瞬を大切にしたい。
しっかり、深く、味わいたいと思う。
倒れたことは辛い出来事だったけれど、
そのおかげで、このひと月に二度も母に会いに来れたという事実。
それは、ある意味での“贈り物”だったのかもしれない。
