タイトルはtower of powerというバンドの曲名です。
当院では腰痛などの患者さんに殿筋、お尻の筋にアプローチすることが多いのですが、それはなぜでしょうか?
殿筋の役割について、見ていこうと思います。

殿筋は体幹と下肢を繋ぐハブのような存在で、人の身体活動で大きな役割を担っています。
1.立位・姿勢保持
中殿筋・小殿筋が骨盤の左右のバランスを保ち、片脚立ちや歩行時に骨盤が傾くのを防ぐ。
骨盤の水平性が保たれることで、腰椎や膝関節への負担が軽減される。
※中殿筋の筋力低下でトレンデレンブルグ徴候
2.歩行
大殿筋が股関節の伸展(足を後ろに蹴る動作)を担う。中殿筋が歩行中に骨盤を安定させ、スムーズな足運びを可能にする。
3. 立ち上がり・しゃがみ動作
* 股関節の伸展(大殿筋)+膝の安定(大腿筋膜張筋やハムストリングスと連携)によって、床や椅子から身体を持ち上げる。
4. ジャンプ・ダッシュ・加速
股関節の伸筋である大殿筋が担当。スポーツでのスプリントやジャンプ動作には不可欠。大殿筋が弱いと、ハムストリングスや腰部筋群に過剰な負担がかかる。
5. 体幹と下肢の連動性の要(コアとの協調)
大殿筋は腹横筋や多裂筋と連動して、股関節-骨盤-腰椎の動きを協調させる。腰痛・膝痛・股関節痛を予防する基盤となる筋肉群。
殿筋が弱ると
* 腰痛・股関節痛・膝痛・足部障害(外反母趾、足底筋膜炎など)
* 骨盤の傾きや不安定性(例:骨盤前傾・後傾)
* 歩行が不安定になり転倒リスク増加
* パフォーマンス低下(ジャンプ力、走力の低下)
簡単にまとめると、殿筋は単なる「お尻の筋肉」ではなく
* 動作の起点
* 姿勢の安定装置
* パワーのエンジン
としての役割があるわけです。
身体運動の土台である、殿筋へのアプローチがとても大事だということが分かりましたでしょうか。
余談
今こうして書いてる時に知りましたが、タイトルのhipはどうやらお尻という意味ではないらしい。本来のお尻を表す語は「buttocks」で、「hip」とは腰部とか股関節あたりを指す語なのだそうです。
さらにスラングで「かっこいい、流行の、最先端の」などの意味があるそうで、「What Is Hip?」は「かっこいいって何さ」みたいな意訳になりそうです。
初聴だった高校生の頃からずっと勘違いして「尻についての曲なんだ~」と思っていた学の無い私でした……。
安井