――でもそれは、未来を育てるチャンスだった
はじめに:弟から届いたLINE
母がある手術を受けることになった。
そのとき、弟から一通のLINEが届いた。
「若い先生だね」
たった一言なのに、胸がざわついた。
「ちゃんと経験あるのかな?」
「大丈夫だろうか…?」
頭の中に、いくつもの“もしも”が浮かんできた。
だがそれは、今思えば「不安」ではなく、自分自身が持っていた思い込みだった。
不安の正体は、フィルターだった
「若い=未熟」「経験が浅い=不安」
そんな構図が、知らず知らずのうちに自分の中に刷り込まれていたのかもしれない。
けれど、ふと立ち止まって考えてみた。
自分自身にも、新米の治療家だった頃があった。
不安や緊張の中、必死に患者さんと向き合い、
そのチャンスを与えてくれた先輩や院長の存在があったからこそ、
今の自分がある。
若いからこそ、ある力がある
思い込みを手放して見てみると、こんな姿が浮かび上がってくる。
若いからこそ――
- 最新の技術や知識をしっかり学んでいて
- 手先も感覚も鋭くて反応が速く
- 固定観念に縛られず、柔軟な判断ができる
つまり、若さには若さの可能性がある。
そしてその可能性は、経験とはまた別の“価値”なのだと気づいた。
「若い先生だから不安」と感じたのは、自分のフィルターの問題だった。
裏を返せば、若い先生だからこそ、これからの時代を担う存在なのだ。
それは、未来への投資でもある
もちろん、家族としての不安がゼロになることはない。
でも、治療家としての自分にとって、
「任せる」という行為には、未来への投資という意味もある。
そしてこの気づきは、
今、自分のもとで働いてくれている若いスタッフたちにも通じる話だ。
教えるだけでなく、
信じて、任せること。
その一歩が、未来を育てていくのだと思う。
おわりに:経験とは、託された記憶の積み重ね
あのとき、母を担当することになった若い先生も
僕が新人だったあの頃のように、
きっと真剣に、誠実に、目の前の人に向き合おうとしているはずだ。
経験とは、託された記憶の積み重ね。
不安を乗り越え、信じて任せることでしか、
次の時代は育っていかない。
だから今日も、僕はしっかり教えて、しっかり任せていこうと思う。