現代人の多くは、日常的に“前方”に意識を偏らせています。
歩行時の視線、スマートフォン操作、対人緊張――いずれも注意が前方に固定され、交感神経が優位な状態が常態化している。
しかし、身体というものは、本来「空間全体」を感じ取ることでバランスを取るように設計されています。
そのため、意識を“後方”に向けるだけで、自律神経系と姿勢制御系に調整が入り、「整う」という現象が自然と起きるのです。
脳の注意系は、方向性によって神経活動に明確な変化をもたらします。
* 前方集中:交感神経優位 → 筋緊張・心拍上昇・呼吸浅化
* 後方注意:副交感神経優位 → 筋弛緩・呼吸安定・血流改善
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特に、後方からの音に意識を向けると、視覚支配を一時的に解除し、音情報を通じて脳幹~視床下部~自律神経系への穏やかな調整信号が流れる。これは“脅威のない静寂”という認識を脳が受け取り、身体全体の緊張が自動的に緩和される結果を生み出します。
「後ろの音を聴く」という一見些細な行為は、
身体全体を神経系から調律する、極めて高度なセルフバランス調整です。
緊張する場面などほど、まず深呼吸して「後ろの音を聴く」意識を持ってみることで、リラックスして
本来の力を発揮できるようになるでしょう。