ツボを触る──それは、ただ表面をなぞることではない。
違和感を探し、質感の異常を見極める作業である。
硬すぎる、柔らかすぎる、熱すぎる、冷たすぎる。
この「~すぎる」に、人の身体の異変は潜んでいる。
まずは大きく触れ、捉える。
そして、捕まえたら指先の焦点を絞り、さらに細かく、深く、繊細に触れていく。
その触診の先で、術者は患者と「一致」を図る。
「ここですね」と術者が言い、
「はい、そこです」と患者が応じる。
この瞬間に、術者の力量が伝わる。
さらに一歩踏み込む。
患者さえ気づいていなかった、潜在する痛みや違和感を術者が指摘する──
これが、診立てにおいて最も重要な一手となる。
なぜなら、本当の原因は、痛みのある場所にはないことが多いからだ。
これこそが、私たちの治療哲学である。
患者は身体についての素人である。
ゆえに、こちらがプロフェッショナルとして導く責任がある。
プロとは、気づきを与え、世界の見え方を変える存在だ。
「知らない」ことは決して美徳ではない。
知らなかった痛み、感じたことのない違和感に気づいたとき、
治療はすでに始まっている。