不安や疑問に対して、
前向きに言い換えるやり方がある。
「それは強みでもありますね」
「失敗ではなく学びですよ」
「そのままで大丈夫」
否定しない。
波風も立たない。
でも、そこで止まるなら、
実質的には何も扱っていない。
言い換えは、事実を変えない。
問題の構造も、
思考の癖も、
行動の選択も、そのまま残る。
触れにくい部分には触れず、
印象だけを整える。
それは対立を避ける方法としては機能する。
ただ、前に進む方法とは少し違う。
人が変わる場面では、
だいたい何かが崩れる。
自分に都合のいい理解が壊れたり、
責任の所在がはっきりしたり、
今まで通りでは通用しないと分かったり。
そこを通らずに済むなら、
それは成長というより、
見方を塗り替えただけに近い。
怖いのは、
それを「十分な対話」だと思い込むことだ。
摩擦を避け続ければ、
傷はつかないかもしれない。
でも同時に、
技術も深まらない。
向き合う力も、
問いの精度も、
ほとんど更新されない。
穏やかさと引き換えに、
停滞が起こる。
結論はシンプルだ。
言い換えだけで完結する対話は、成長には直結しない。
嫌われない代わりに、
変わらない。
それを選ぶのは自由だけれど、
少なくとも私は、
それを進歩とは呼ばない。
安井
