
街にある鍼灸院を見ても「針灸」とは書いてないですよね。鍼という漢字はあまり日常では馴染みがないと思います。
感じの成り立ちから違いを探って行きましょう。
まず「針」は、金(かねへん)に「十」と書きます。金は金属を示す部首で、素材が金属であることを表します。十は数字ですが、字形としては交差や貫通を思わせる形を持ち、まっすぐ通す、突き通すという機能的な意味と結びついてきました。構造としては、金属でできた、まっすぐ突き通す道具という内容になります。裁縫針や時計の針、注射針など、用途を限定しない一般的な道具を示す字です。
一方「鍼」は、金に「咸」を組み合わせた形です。金が金属を示す点は同じですが、咸には「すべて」「あまねく」「満ちる」という意味を持ちます。また古義では「感じる・感応する」というニュアンスも含みます。
つまり「鍼」は金属で“感応させる”もの、つまり単なる道具ではなく、身体全体に作用を及ぼすものという思想が込められているのです。古典中国医学では医療用のはりをこの字で表記し、一般的な針とは区別してきました。
まとめると、「針」は金属でできた貫通具を示す一般的な言葉です。一方で「鍼」は、金属で広く作用を及ぼす医療具を示す専門的な字です。ただ刺すだけのものなのか、それとも体全体に変化を促すものなのか。その違いは、実は文字の中に最初から込められています。
安井
