
世間では四毒抜きなんて言葉が流行っていますが、東洋医学にはもっと昔から三毒説という考え方があります。もともとは仏教の教えですが、東洋医学の視点で見ると、とても臨床的で、体を理解するうえで大切なヒントになります。
三毒とは「貪(むさぼり)」「瞋(いかり)」「痴(まよい)」の三つ。欲張りすぎる心、怒りやイライラ、そして考えすぎや思い込み。この三つが続くと、心だけでなく体にも影響が出てくるという考え方です。
東洋医学の古典である『黄帝内経』には、感情と内臓は深く関係していると書かれています。たとえば怒りは「肝」に負担をかけ、頭痛やめまい、血圧の変動、月経トラブルなどにつながることがあります。欲張りすぎたり無理を重ねたりすると「腎」が消耗し、不眠や耳鳴り、腰のだるさ、更年期症状の背景になることもあります。また、考えすぎや悩みすぎは「脾」を弱らせ、慢性的な疲労感や不安感、集中力の低下として現れることがあります。
大事なのは、これを道徳の話として捉えないことです。「怒ってはいけない」「欲を持ってはいけない」ということではありません。問題なのは、それが続き、巡りが滞ること。感情はエネルギーです。うまく流れていれば問題ありませんが、溜まったり暴走したりすると、気血のバランスが崩れ、症状として体に現れます。
現代は情報も多く、常に急かされるような社会です。知らないうちに焦りや怒り、執着が積み重なり、自律神経の乱れや不眠、慢性疲労として出てくることも少なくありません。だからこそ治療では、症状だけでなく、その人の生活や感情の傾向にも目を向けます。最近イライラしていないか、無理をしていないか、考えすぎて眠れなくなっていないか。そこに回復の糸口があるからです。
最終的な目標は、症状を抑え込むことではなく、心と体の巡りを整えること。心が少し静まり、過度な欲や怒り、迷いが落ち着いてくると、体も自然と調和へ向かいます。三毒説は、心身はひとつだという東洋医学の知恵を、わかりやすく教えてくれているのです。
安井
